「アトピー性皮膚炎だけど石鹸を使わない方がいい?」という疑問に対する専門家の答え

前回のアトピー性皮膚炎のスキンケア(基本的なこと)の記事の中で,アトピー性皮膚炎のスキンケアにとって大切なことは,次の3つのことだと述べました。

 ①素肌(皮膚)を清浄して,清潔にすること
 ②素肌(皮膚)を清浄する場合,バリア機能が低下していることに配慮すること
 ③バリア機能を回復させること

今回は,このうち①について考えてみましょう。


素肌を清浄して,清潔にするとありますが,アトピー性皮膚炎の場合,石けんやシャンプーを使わない方が良いのでしょうか?
アトピー性皮膚炎であっても,石けんやシャンプーを使って良いのでしょうか?

インターネット上でも,アトピー性皮膚炎の方で,石けんを使わない方が良いのかどうかという話題がみられます。
石けんやシャンプーを使うのを止めたら症状が良くなったという声もあります。

では,この問題についての医師の意見とはどういうものでしょうか?

アトピー性皮膚炎のためには皮膚の清潔が大切

以前は,石けんで洗わない方が良いと考えられていたこともあったようです。
しかし,今は,石けんで清潔にすることがアトピー性皮膚炎の方にとって良いと考えれています。

たとえば,次のような指摘があります。

「アトピー性皮膚炎患者は原則として石けんを使って皮膚を洗浄したほうが,使わないよりも症状が軽快することは以前から報告され,皮膚科医のコンセンサスとなっている.これは,汚れをきちんと落とし,また病巣部の細菌数を減らすことがアトピー性皮膚炎の再熱を防ぐには重要であるためである.」
(日本美容皮膚科学会監修『美容皮膚科学』南山堂,2009年2版,325頁)
「皮膚表面に残った汗やよごれも刺激となる.また細菌繁殖を抑えるためにも、皮膚は清潔に保たなければならない.よほど症状がひどい場合を除けば,ぬるめの湯に毎日でも入浴した方がよい.」
東北大学教授安田利顕先生著,東邦大学客員教授漆修先生改訂の「美容のヒフ科学」(南山堂,2010,9版,219頁)
「皮膚にトラブルがある場合でも,皮膚清浄の重要性に変わりはない.汗や垢などの皮膚の汚れがアトピー性皮膚炎を悪化させることはよく知られている.」
「皮膚表面に分泌された皮脂や表皮由来のタンパク質などが長時間皮膚表面に放置され,酸化や分解腐敗して抗原性を呈し,アトピー性皮膚炎を悪化させる可能性がある」
「入浴時に石けんを用いてこれらの皮膚の汚れを十分洗い流すことにより,アトピー性皮膚炎のかゆみが減少し,アトピー性皮膚炎が改善する.皮膚表面に二次的に増加した細菌数も石けんによる清浄で著明に現象する.したがって,アトピー性皮膚炎の悪化因子である”皮膚の汚れ”を落とすことはアトピー性皮膚炎患者のスキンケアにおいて重要である.」
「かつては瘙痒を惹起する,また,外的刺激を回避するという考えから入浴を控え,石けんの使用も控えるべきとされていた.しかし,現在では皮膚洗浄の重要性が確認され,むしろ積極的に洗浄や入浴をさせるようになった.」

(日本美容皮膚科学会監修『美容皮膚科学』南山堂,2009年2版,98頁)

このように現在,専門家の間では,石鹸を使って清浄をした方が良いと考えられています。

石鹸を使った清浄は大切ですが,その方法も大切です

このように,アトピー性皮膚炎の方にとって,石けんで清浄して,皮膚を清潔にすることは大切なことであると考えられています。
しかし,清潔が大切だからといって,ゴシゴシ洗ったりするのはよくありません。
石けんで洗うのが大切だといっても,どんな方法でも良いという訳ではありません。
石けんをしばらくやめて状況が良くなったという場合,もしかすると次の清浄の仕方に問題があったのかも知れません。

前回のアトピー性皮膚炎のスキンケア(基本的なこと)の記事の中で,アトピー性皮膚炎のスキンケアにとって大切なことは,次の3つのことだと述べました。
 ①素肌(皮膚)を清浄して,清潔にすること
 ②素肌(皮膚)を清浄する場合,バリア機能が低下していることに配慮すること
 ③バリア機能を回復させること

 今回は,①について取りあげましたが,次回は,「②素肌(皮膚)を清浄する場合,バリア機能が低下していることに配慮すること」について述べたいと思います。

(公開日2013.1.21)(最終更新日2013.1.21)

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